2012年6月7日木曜日

中古車と「物語」と妄想と思い込みのカオス















photo credit: Chris J Bowley via photo pin cc

モノが豊富で成熟した社会では、商品を売るために必要になるのは「物語」です。
その商品が生まれて顧客の手元に来るまでに発生した、ありとあらゆるストーリー。
未来に発生するであろうストーリーも含まれるでしょう。

その商品にどんなストーリーがあるのかを発掘して、どのストーリーを顧客に紹介するのか。
こうした編集を行うことが販売店のひとつの役割になっていくと思います。
(「物語」についてはこちらのエントリーでも触れています)


っという話しを踏まえて以下の図をご参照ください。




























これは中古車の価値の変化について図にしたものです。

中古車は新車に近ければ近いほど価値が高いとされます(一部例外ありますが)。
つまり新車からポジションが遠くなればなるほど価値が目減りしていきます。

これは新車からの距離以外には価値基準がないことが原因で起こります。
もし、違う切り口による価値基準で評価ができるようになれば、
価値の下落を緩やかにすることができます。

残念ながら、新車からの距離という価値基準はかなり強力なため、
大半の中古車はこのルールから完全に逃れることはできません。

古ければ古いほど価値がある、というパラダイムシフトがおこるクルマは、
一部のビンテージだけになります。

そこで冒頭の「物語」の話になります。

”その商品が生まれて顧客の手元に来るまでに発生した、ありとあらゆるストーリー”
これが重要になってきます。

そして、新車には無く、中古車だけが持つコンテンツというものがあります。

それは「オーナー」と「歴史」です。
なんだか奇異で大げさに聞こえるかもしれませんが、オーナーとクルマのこれまでの付き合い自体がコンテンツになり得るということです。

初めて買ったクルマ、亡くなった祖父が乗っていたクルマ、このクルマで何処へ行った、そこでこんな人生のイベントがあった…etc.

これらは唯一無二のリアルな、そして事実に基づく貴重な「物語」です。

次の乗り手がこれらの「物語」を受け継いで、そして新たな「物語」を紡いでいく。

いうなれば「物語」のリレーです。

どんなフォーマットで「物語」の受け渡しをするかは熟考する必要があると思いますが、
もしかすると、実際に顔を合わせてお茶でも飲むのが一番いいかもしれません。

クルマを売りたいヒトと買いたいヒトを結びつけるプラットフォームを整備して、
お茶をしながら商談(面談?)をして譲り渡す・譲り受ける。

飼い猫を里子に出すような心境に近いかもしれないです。

C2Cで中抜きかぁ!?っと思われる方がいるかもしれませんが、
そうではありません。

ワタシは将来的にはC2Cに限りなく近いモデルが、市場においてそれなりのボリュームを持ってくると考えています。しかし、コンシューマ同士には限界があるので、必ずプロフェッショナルであるビジネスの存在が必要とされる。そう予想しています(詳しくはコチラをご参照ください)

B2Cの現場でも「物語」の受け渡しを効果的に利用することは可能です。
「物語」が響くエンドユーザーは必ず存在すると思います。

誰かに強烈に刺されば、他のヒトを惹きつけることができるはずです。

そうすれば、単純に新車からの距離だけが価値基準になる、といったことはなくなるのではないでしょうか。